- "ブリーダーとして誠実でありたい"
メインクーンを育てる土居良子さん - キャットショーで活躍する猫、そのお世話をするブリーダーさん。
意外と知らないキャットショーの世界やブリーダーさんのこと、ブリーダーさんだから知る猫のことを直撃インタビューで教えてもらう連載企画、第四弾。
土居良子ブリーダー
ブリーダー歴:29年
【メインクーン】
ハッピー(2歳7ヶ月)
チャームポイント:温厚な性格で優しいけど、いたずらな性格
Q.飼育されている猫ちゃんの種類と数を教えてください。
いまはメインクーンを3匹。
実はハッピーちゃん、10日前に初めての出産をしました。いまは赤ちゃんとハッピーちゃん、おばあちゃんの3匹がいます。
▲いたずら好きのハッピーちゃん
▲取材の10日前に生まれたハッピーちゃんの赤ちゃん
Q.メインクーンの魅力を教えてください。
メインクーンは、猫ちゃんの中で1番の大型猫です。
性格は大らかでおっとりしているところが魅力かなと思います。ハッピーちゃんはちょっと違いますけど(笑)堂々としていて静かなところも魅力的です。
"マンションで飼える猫"とさえ言われています。なぜなら、鳴かないし、むやみに動き回らない品種だからだと思います。現在はペット可のマンションが増えてきていますが、一昔前はペット不可がほとんどでした。そんな中でもメインクーンは大人しいので飼えてしまうくらいだ、という表現です。
▲ハッピーのお乳を飲む赤ちゃん
Q.メインクーンを育て始めたキッカケは?
以前、アメリカンコッカースパニエルというわんちゃんを飼っていました。その子が13歳と数か月で亡くなってしまったのですが、外で飼っていたこともあって、体にダニがたくさんついていたんです。なので、「絶対に今度は完全室内飼いのできる猫ちゃんがほしいな」と思って、探し始めたのがきっかけです。
猫ちゃんの雑誌で下調べをして、ブリーダーさんのところへ行って譲ってもらいました。初めてメインクーンを見に行った時、夫は「なんか犬みたいな猫だな」と言っていました。
初めは単純に、ただアメショーのような柄でロングヘアーなのが可愛いなというくらい。一緒に暮らすうちにどんどん可愛くなって、その子の子どもが見たいと思って…気づけば29年です。
▲ハッピーとおばあちゃんのラブちゃん
Q.猫ちゃんのお世話で特にこだわっていることは何ですか?
やっぱり食事と体調管理です。メインクーンは大きくなる猫種なので、たくさん食べることがとても重要です。なので、体調に合わせてフードを変えています。そして、食事に飽きが来ないように、ドライフードとウェットフードを併用したりしています。例えばアビシニアンだったら、スリムさを保つために食事制限をしなくてはならないこともあるでしょう。食が細いアビシニアンもいますので。しかしメインクーンは大きくなる猫種なので、私は食事制限をしなければならなかったことはありません。むしろたくさん食べれるように飽きない工夫が必要なんです。
体調に関しては、一緒に生活をしている中で「なんかおかしいな」と感じたら、すぐに動物病院に連れていっています。以前、子宮蓄膿症で病院に行ったとき、「なぜ体調がおかしいと分かったんですか?」と驚かれたことがあります。一緒に暮らしていれば分かります。日頃からよく観ているからこそ、気が付けるんだと思います。
土居さんがブリーダーとして大切にしていること
▲今までに土居さんが育てた猫ちゃんたち
Q.猫ちゃんを譲る際にこだわっていることは?
3か月くらいで猫ちゃんを譲ったときのイメージと、8か月の成猫になったときのイメージがどのようにリンクするのかをしっかり把握するようにしています。
そのため、猫ちゃんを譲った方には8か月になったときの猫ちゃんの横顔・真正面・姿形・カラーの写真を送ってもらっています。写真から3か月と8か月でどう成長していったかを何度も見て経験を重ねて、「この子とこの子を交配させたらおそらくこういう子ができるだろう」というイメージが分かるようになっていきました。
あと猫ちゃんを譲る条件として、1回はキャットショーに出場させてほしいと伝えています。ジャッジ(キャットショーの審査員)として、8か月になった姿を実際に見て触れられるからです。写真だと角度によって見え方が全く違うので。キャットショーに出てもらうこと。これは絶対です。
Q.実際に猫ちゃんを交配する時はどんなところを見ていますか?
実際に交配させるときは、まずは血統書を見せてもらいます。ある方の猫の血統書を見て「体が小振りのかわいい顔の子になるよ」といいましたが、本当にその通りになりましたね。経験を重ねるにつれて、正確に当たるようになってきていると思います。だって、30年近くメインクーンだけをやっているんですよ(笑)
大切なのは"誠実さ"
Q.ブリーダーとして大切にしていることは?
やっぱり誠実さでしょうね。猫ちゃんは命ある存在なので、相手のオーナーさんにも最後まで誠実であってほしいと思っています。
私は、猫ちゃんを有償でお譲りしています。けどそれはお預かり金で、私はどんな猫ちゃんでも亡くなった際のお骨に供えるお花を贈っています。最後まで猫ちゃんの行く先は見つめていってほしいという思いがあります。
猫ちゃんと関わってきた29年間、色んなことに遭遇してきました。私がお譲りした猫ちゃんが望まない扱いを受けた際は引き取って、自分が信頼できる人に渡したこともあります。私の猫ちゃんをペットとして生涯可愛がってくれた方なら、絶対安心だからです。良く存じ上げない方の場合はその方の家まで行って、この人だったら大丈夫と確認した上でお渡しします。「返してください」と引き取りに行ったこともありますよ(笑)それが私なりの誠実さです。やっぱり命ある存在なので、物と違って替えが利かないですから色んなことを考えてほしいです。子猫ができて人に渡しても、生涯面倒見てもらうところまである程度はきちんと考えていただきたいです。
家庭猫も保護猫も…実はいろんな猫ちゃんが参加できるキャットショー
▲取材陣に興味深々のラブちゃん
Q.キャットショーへの参加を検討しているオーナーさんへ アドバイスをお願いします。
キャットショーというと、ハードルが高いイメージをお持ちの方が多いように思います。でも実際は、ハウスフォールド(家庭猫)部門もありますし、メインクーンやスコティッシュフォールドなどの純血種でなく、一般家庭の猫ちゃんでもチャレンジすることができるんです。
例えば以前あったキャットショーでは、レスキュー(保護猫)の猫ちゃんを1匹だけハウスフォールド部門で出してもらいました。初めての試みでしたが、キャットショーの間口を広げるために実際はそんな取り組みもあります。
Q.キャットショーの意義について どのように考えますか?
日本よりずっとキャットショーが浸透しているアメリカでは、ハウスフォールド部門がもっと盛り上がっています。ハウスフォールド部門で出場したオーナーさんが、会場で他の猫種も見て「こんな猫ちゃんがいるんだ」と知れるので、猫ちゃんの魅力をより多くの方に知ってもらえるキッカケにもなっているそうです。日本では未だにそこまで浸透していないですね。そこに少しでも近づけるといいと思います。猫ちゃんを守っていくためにはキャットショーの認知度を上げていくことが大切だと思っているので、まずはたくさんの方に足を運んでみてほしいです。
▲土居さんが育てた猫から産まれた当時世界一となったメインクーン
Q.キャットショーで活躍できる猫を育てるために、重視すべきことは何だと思いますか?
まずはキャラクター、つまり性格です。どんなに素晴らしい猫ちゃんでも、ジャッジ(キャットショーの審査員)の手に余る猫ちゃんは難しいです。なので、人間に慣らして、ジャッジ(キャットショー審査員)に触られても怖くないことが分かるように、常日頃から猫ちゃんとスキンシップを取ることが必要だと思います。元々生まれつきいい性格の子もいますよね。人間と同じで、性格がいい子も気難しい子もいます。気難しい子でもできるだけやんわりとすれば、ちょっとだけでも良い子になっていきますよね。私は、人間も猫ちゃんも同じで、まずは性格だと思っています。
▲土居さんとハッピーちゃん
Q.キャットショーのお客さんにメッセージをお願いします。
とりあえずぜひ一度見に来てください。
猫ちゃんが主役のキャットショーなので、見学の際のマナーは少し気にしていただきたいですが、オーナーさんに声をかけて「この猫見てもいいですか?」と聞けば、皆さん見せたくてしょうがないわけですから、快く見せて下さると思います。色んな方が猫ちゃんの魅力を知るキッカケになると嬉しいです。ショーキャットも家庭猫も、意外とみんな同じということも分かっていただけると思います。