健康で美しい猫を育てる
ブリーダーたち
スフィンクスのブリーダー ブリーダー歴15年 にーな ニーナ さん
いま飼育している猫ちゃんの猫種を教えてください。
みんなスフィンクスとバンビーノで、今はちょっと少ないですが、合わせて10頭ぐらい飼育しています。JAPAN CAT SHOWには、スフィンクスの2頭を出陳します。
スフィンクスの魅力は?
スフィンクスの魅力は、猫顔でいて性格はいわゆる猫ちゃんのイメージと真逆なところ。非常に人懐っこくて、優しくて、自由奔放過ぎない。飼い主が神様みたいな感じだから、人がいないと寂しくてしょんぼりしてしまいます。猫ってマイペースのイメージが強いですが、スフィンクスはマイペースじゃなくて、飼い主ペースですね。
例えば、仕事で疲れて帰ってきたら、「おかえり」って、帰った瞬間に迎えに出てくるんです。そしてその時、人間の表情をみます。イライラしていたら、遠くから覗いて待っています。大丈夫だったら甘えに来るんです。そんな感じで、非常に賢くて、優しい子たち。
この子たちは、まつ毛・眉毛・ひげも何にもないから、人間に頼っているのかなと思います。その代わり、とても愛情深い猫ちゃんたちなんです。
オリャ(2歳3か月)
【スフィンクス】
チャームポイント:甘えん坊でおもちゃが大好き。自分の魅せ方がとても上手。
ブルードリーム(6か月)
【スフィンクス】
チャームポイント:手触りのいい肌。大きな耳、目は綺麗なレモン形。スフィンクスの中では珍しい、ブルーの毛色と黄色がかった緑の目の組み合わせ。
キャットショー出演歴:2頭とも、日本では8月が初
Breeder’s view 毛が少ないスフィンクスならではの育て方
スフィンクスは、全くの毛なしということではなく、産毛みたいな毛が薄っすら生えているんですね。
そうなんです。スフィンクスって、世の中で3種類ぐらいなんですよ。カナディアン・スフィンクスと、ドンスコイ・スフィンクス、ピーターボールドの3種類。DNAが全部違います。カナディアン・スフィンクスは、鼻の部分がちょっと産毛みたいになっていて、耳の裏はツヤツヤ。ドンスコイ・スフィンクスは、例えるならばゴムみたいな手触りですね。
毛なしの猫ちゃんならではの特徴はありますか?
スフィンクスは、迎え入れた際に猫アレルギーになかなかなりにくいって言われています。毛がほとんどないから、猫アレルギーになりにくいのかもしれません。汗とか体の液でアレルギーがあるなら別の話なんですが、比較的アレルギーにはなりにくいのかなと思います。
あと、指が人間の手みたいで非常に長いんです!毛がないからよく見えるんです。遊んだりすると、指で捕まえる癖があるんです。例えばドライフードでも、自分のお皿から指で掴まえて、匂いを嗅いで食べるんです。おもちゃでもやっぱり指で掴まえようとします。足も丸ごとポンとじゃなくて、指を広げて掴まえようとします。この子に限らず、猫種的にそのような特徴があるんです。
毛がない分、皮膚が傷つきやすいんじゃないかと思ってしまいますが、実際どうなのでしょうか?
おもちゃを選ぶ時にはこの子たちのことを考えて選んでいます。例えば、爪とぎ。 すごく固い素材から作られているとすり傷になりやすいんです。時にやり過ぎてしまう時があります。でも、意外と皮膚はそんなに弱くはないんですよ。すり傷になりやすいかもしれませんが、それ以上何の問題も見受けられません。「毛がないから、すぐ怪我しやすいんじゃないですか?」とよく質問されますが、よっぽどなことがない限り怪我をするまでに至りません。ワクチンを打ちに行ったとき、日本の獣医さんも皮膚の丈夫さにびっくりしていました。
Breeder’s view
"食事"にこだわる
ニーナさんのショーキャットの飼育方法
ショーキャットを育てる上で、こだわっていることはありますか?
キャットショーに出ている子たちは、ご飯が別のダイエットメニューになっています。もちろんロイヤルカナンにお世話になっております。子猫から母猫まで。
あとは、やっぱり肉です。お肉は、冷蔵庫じゃなくて冷凍庫で保存していて、家に猫ちゃん用の冷凍庫が4台あります。なぜかと言うと、猫ちゃんのために馬肉、牛肉、オーストラリア産のカンガルー肉、鶏肉、鹿肉、内臓も、色々仕入れて自分のところでミンチにしているんです。バランスに配慮し、赤身だったら何%、脂だったら何%、内臓、心臓や肝臓もそれぞれ分割して、全部パーセンテージを合わせてミンチを作ります。1回分でパックに入れて冷凍させています。様々な食事への配慮の結果、しっかりとした体づくりにも繋がっていると思っています。
食事について、すごく綿密に管理されているんですね。やはり猫ちゃんの食事に関する勉強にも、力を入れていらっしゃるんでしょうか?
そうですね。世界中の色んな獣医師さんやオンラインのセミナーを聞いたり、いろんなブリーダーさんとやり取りをする中で勉強をしています。ロイヤルカナンでも、色んな獣医師さんのセミナーをやっていますよね。ただ日本にはスフィンクスのブリーダーさんがそんなに多くはないので、情報交換をするとしたらほとんどが海外のブリーダーさんになっています。日本でもスフィンクスのブリーダーさんがもうちょっと多かったら嬉しいなと思います。
でもそういう意味では、キャットショーはとてもいい勉強の場になっています。スフィンクスは、最近キャットショーにはほとんど出ないんですけど、他の猫種のブリーダーさんやベテランブリーダーさんたちがいろいろと会話してくださったり、情報を与えてくれます。私もより有力なブリーダーになることを目指したいですし、成長したいなと思っています。
ニーナさんが猫ちゃんのことをとても熱心に勉強されていることが伝わります。
綺麗な猫をブリードすること、猫ちゃんのことを知ることが仕事だと思っています。1回勉強したら、それでOKではありません。次々と新しいことが出てくるから、日々の勉強を欠かさずに行う必要があります。
ところで、スフィンクスは、ペットとして飼う時も、お肉を食べさせなければいけないんでしょうか?
そんなことはありません。あくまでもショーに向けた体づくりのためです。新しい飼い主さんのところに行っても問題がないように、うちにいる時からドライフードも缶詰も食べさせるようにしています。今週はずっとドライフードで、次の週はパウチや柔らかい形状のフードというように順番にあげるようにしているんです。だから、新しいお家に行った際にも何の問題もありません。
そこまで食事にこだわる理由は?
私の好みががっちりした体型ということが挙げられます。特に、スフィンクスとかバンビーノは他の猫種と比較して毛が非常に少なく、体型が分かりやすいことから、しっかりとエネルギーが取れるような食べ物を与えるようにしています。
好みの猫ちゃんに
出会うためのポイント
ここまでお話を聞いて、スフィンクスに興味を持たれた方もいると思います。日本ではスフィンクスのブリーダーさんはまだ多くないというお話でしたが、猫ちゃんの数も、まだ日本では少ないのでしょうか?
以前に比べると、スフィンクスを飼育するブリーダーさんはかなり増えてきているので、猫ちゃんを迎え入れたいと思った時にそれほど待つことはないと思います。あとは何よりも、好みのタイプの子に巡り合えるかどうかという話ですね。
好みの猫ちゃんと巡り合うためのコツはありますか?
私の場合は、血統書を送ってもらうんです。ブリーダーの仕事は、やっぱり血統ラインの勉強です。親猫やおじいちゃん、おばちゃんの写真、あと、このカップルの今までの子供の顔を見せてもらうこともあります。血統で子猫の基本が大体分かるんです。
血統に詳しくない方でも、ニーナさんのような方に相談して、お迎えする猫ちゃんのことを知ることもできるのでしょうか?
そうですね。私は「子猫をお迎えしたい」と相談された時、一番最初に「どんな猫が希望ですか?」「どんなタイプが希望ですか?」など、タイプ、色、好みを聞くようにしています。新しい飼い主さんにとって、一番ぴったりの性格の子を選んでご提案しています。
猫種だけでなく、好みを相談してからお迎えできるのは、安心ですね。
例えば、甘えん坊の中でも程度の差はかなりあります。「いや、甘えん坊すぎるのはちょっと…」と言われたら、「それだったら、この子じゃなくてこの子どうでしょうか?」という感じでご提案しています。
日本のキャットショー
初出陳に向けて
今回出陳される子たちは、今年の夏が日本のキャットショー初出陳となるんですよね?
そうですね。別の子の話になりますが、数年前までは5年連続ベストブリードを獲っていたり、スフィンクスの何千頭の中で3位になったことがありました。
ショーに向けた準備として、何かされていることはありますか?
ショーの前は、脂が出ないようにグルーミングします。だから1週間前からシャワーをしたりするなどのケアをします。それは、ジャッジさんが触る時、手に脂が残らないように手触りがいい感じにするためです。後は、もちろん爪切りと耳掃除もしています。
スフィンクスは脂が溜まりやすいので、ショーの準備としてマニキュアをするときの要領で爪を出して、しっかり油を取ります。スフィンクスは毛が少ないからここまで全部綺麗にしてショーに連れて行きます。
2頭の日本のキャットショーデビューを前に、今の気持ちを教えてください。
この子たちは、海外から来た猫ちゃんたちなんです。スタンダード通りではありますがユニークなニュアンスがあるため、今回日本のキャットショーに初出陳で、日本のジャッジさんが認めてくれるかどうか、ワクワクしています。